12万人超のランナーが参加したWings for Life World Run 2019

2019年5月5日、世界同時にスタートしたWings for Life World Run 2019で、脊髄損傷で長年まひ状態だったスイス人ダビド・ムゼーさんがスイス・ツークのスタートラインを自分の足で越えた瞬間の感動は非常に大きなものでした。そしてその興奮は数時間後に64.37kmを走ったロシアのイヴァン・モトリンさんと53.72kmを走ったロシアのニナ・ザリナさんが男女グローバルチャンピオンに輝くまで続きました。ムゼーさんがスタートラインを自分の足で越えた瞬間は、多種多様な参加者が脊髄損傷の治療法発見のための募金活動を行うチャリティーイベント、6年目の開催を迎えたWings for Life World Run 2019のトップハイライトでした。車いすランナーを含む12万人超のランナーが72カ国・323会場で同時にスタートし、累計1,103,276kmを走りました。

ムゼーさんはWings for Life World Runの意義を体現する存在になりました。ツークの他の参加者と数百万のストリーミング視聴者は、彼が車いすから立ち上がり、前へ向かって歩く様子を息を止めて見守りました。31歳のムゼーさんは自力で390mを歩いたあと、Wings for Life World Runの象徴、“動くゴールライン” ことキャッチャーカーに追いつかれましたが、その一歩一歩は、2018年秋に発表された複雑な治療研究のブレイクスルーが人類へもたらしたインパクトの大きさを示していました。

ムゼーさんがスイスのスタートラインで一歩を踏み出そうとしていたその時、彼と同じく脊髄損傷を抱えるヘルト=ヤン・オスカムさんも母国オランダのスタートラインを自分の足で越えてランナーたちにさらなる興奮をもたらしました。このランイベントで集まった参加費用と募金の全額は、成功確率が高いと見込まれている脊髄損傷の治療研究への資金援助を目的として設立されたWings for Life財団が支援する研究プロジェクトへ送られます。Wings for Life World Run 2019では350万ユーロ(約4億1,400万円)を超える募金が集まり、その額は今も増え続けています。

「信じられない気分です。これまではクリニックの滑らかな床の上を6分歩くのが精一杯でしたが、5、6回の休憩を挟んで30分も歩けました。自己新記録です」と雹の粒が肩に当たる天候の中でも笑みが消えないムゼーさんは語りました。「他の参加者が私のストーリーに心を動かされ、インスピレーションを得てくれていることを嬉しく思います。スタートラインで横を通り過ぎていく人たち全員が手を叩いて励ましてくれたのは特に感動的でしたね」

Wings for Life World Run 2019は午前11時(UTC / 協定世界時)に世界同時スタートし、186以上の国籍のランナーたちがキャッチャーカーに追いつかれるまで走り続け、オーストラリアやコロンビア、南アフリカやカザフスタンなど、世界各地で様々な記録が生まれました。Wings for Life World Runはオープンなランイベントで、キャッチャーカーが追いかけてくる会場開催のフラッグシップラン、またはWings for Life World Runアプリの “主催されているアプリ・ラン” や “個人アプリ・ラン” から誰でも自由に参加できます。

イタリアでは季節外れの雪が降り、インドのムンバイでは気温が35℃近くまで上昇するなど、2019年は開催地ごとのコンディションの違いが対照的でした。また、今年からキャッチャーカーの速度が変更になったことから女子はドラマティックなフィニッシュとなり、ツークから参加していたニナ・ザリナさん(ロシア)がブラジル・リオデジャネイロから参加していた2017年女子グローバルチャンピオンのドミニカ・ステルマックさんをわずか160mの僅差で下しました。また、男子はトルコ・イズミルから参加していたロシア人ランナーのイヴァン・モトリンさんが64.37kmでグローバルチャンピオンになり、ロシア人男女ダブルを達成しました。

また、Wings for Life World Run 2019ではダカール・ラリー王者のマティアス・ウォークナー氏(オーストリア)、元スキージャンプ選手のアダム・マリシュ氏(ポーランド)、元F1ドライバーのデビッド・クルサード氏(英国)など様々なスポーツスターたちがキャッチャーカーの運転を担当する中、スキー世界王者のヘンリック・クリストファーセン氏がバーチャル・キャッチャーカーの運転を担当し、アプリ・ランN経由で参加したランナーを祝福しました。他にも、ビーチバレーボール界の新星エドゥアルダ・“デュダ”・サントス・リスボア氏(ブラジル)、複数のIRONMAN優勝を経験しているダニエラ・リファ氏(スイス)、ダカール・ラリー総合優勝5回を誇るシリル・デプレ氏(フランス)、MTBワールドカップ王者ヤナ・ベロモイナ氏(ウクライナ)など世界的に有名なアスリートたちが各地のレースを走りました。

7回目となるWings for Life World Run 2020は5月3日(日曜日)に世界同時開催されます。